1. 苦難のスケジュール
今回の旅の問題点、それは日程だった。
バレンシア戦の開催予定日は9月21日。僕がこのゲームをターゲットに選んだのは、それが強豪同士の盛り上がるゲームになるだろうというだけではなく、ちょうどこの時期のバルセロナが1年で最高に盛り上がる『メルセ祭』と重なるという理由からだった。秋が訪れているとはいえ、まだ地中海らしい気温を維持している時期でもあるし、街歩きするにも適している。バルサとフィエスタ。数少ないバルセロナ行きのチャンスを活かすには、そしてそれがハネムーンであるならば、この組合せは最高だった。
「かりにバルサで嫁に喜んでもらえなくとも、祭りでは楽しんでもらえるだろう」
しかしその旅行を計画していく中で、僕は面倒な問題にぶち当たることになる。それはこの時期が、日本でも連休になっているということだった。19日(月)が敬老の日で、23日(金)が秋分の日。ダブル3連休に挟まれたその1週間は他の日本人にとっても海外旅行の絶好の機会となり、飛行機のチケットが軒並み売り切れ。格安航空券を利用しての個人旅行しかしたことのない身としては、途方に暮れる有様だった。
1週間後なら10万ちょっとで売っている飛行機チケットが、平気で15万円くらいする。格安よりも正規のPEXの方が安いなんていうバカげた状況になっている。しかもバルセロナ着が22時とかばかり。普通ならば22時着でも、まあ諦めもつくところだが、今回は事をややこしくしていたことがもうひとつある。それは、バレンシア戦がミッドウィーク開催だということ。つまりは火曜日(20日)か水曜日(21日)の開催ということで、正式な日程がなかなか決まってくれずに僕は、神経をすり減らしていった。
20日の試合を見るためには、19日にバルセロナに入っておく必要がある。当日の22時着などというのでは、着いた瞬間からテンションが最低ラインをさまようのは間違いない。テレビのダイジェストを見に、わざわざバルセロナに行くなんてのは悲しすぎる。しかし19日は休日で、チケット代もワンランク高い。しかも売り切れ続出。
ぐあーーー、こちとら連休なんか関係ないんじゃ!!
バレンシア戦とメルセ祭に行きたいだけなんじゃ!!
限られた予算の中で出来ること、それは20日発に勝負を賭け、ゲームが21日になるのを祈ることだった。今回、僕は運よく日本旅行のフリーツアーの中から、一人17万円というものを発見していた。これなら、航空会社は自由に選べないものの、全体としては安く抑えることができる。KLM指定も本来なら可能なのだが、日程が日程だけに受付けてもらえなかった。キャンセル待ちが30件を超えているんだそうな。んなアホな。
そして僕らは、それだけでひとつのストーリーでも書けそうな紆余曲折の果てにそのツアーを押さえることができた。足は確保したので、あとはLFPのいい発表を待つだけ。人事を尽くして、天命を待つ・・・。内容はちっぽけだが、気持ちは真剣だった。9月になってからは、日程に関するムンドの記事をひたすらにチェックする日々。変則的なミッドウィーク開催なので、ムンドも他より頻繁に関連記事を出してくる。普段は大して気にも留めない試合日程の記事が、一面よりも重要な意味を持つ数日だった。
ひょっとしたら他の人の参考にもなるかもしれないので、リーガの日程決定に至る経緯も書いておこうと思う。ご存知の方も多いと思うが、リーガのキックオフ時間は多分にテレビの影響を受ける。特にバルサやマドリといった視聴率を取れるカードは商品価値が高く、衛星放送局CANAL+(カナル・プルス)の意向が影響力を持ってくるのだ。CANAL+は毎節、日曜日のゲームのうちの1つを独占放送し、残りがPPV(ペイパービュー)に回される。そして毎節、比較的注目度の高い1試合だけが全国放送として土曜日に無料開放され、普通に見ることが出来るというシステムになっている。
バルサTVはCANAL+の1チャンネルという形で放映され、PPV指定のゲームは別料金。つまりスペインでもバルサのゲームを全部見ようと思うと、結構な金額がかかってくるということだ(当然ライブ放送ではあるけれども)。スペインにいさえすれば、週末はフットボル三昧だ、なんてことはなく、視聴契約しているテレビのお世話にならなければならない。
僕の場合で説明すると、最終的にバルサ対バレンシアが21日(水)開催になったのは、その直前のアトレティコ対バルサがCANAL+での放映になったことが決定的な意味を持っていた。当初このアトレティコのゲームは無料全国放送(土)になる可能性が高かったのだが、CANAL+がそれを拒否。よってCANAL+による日曜枠での開催となり、それにしたがってバレンシア戦は水曜開催(PPV放送)になったというわけである。
最初にムンドに「バレンシア戦は20日開催」と掲載された時には、正直目の前が真っ暗になった気がした。しかしそれはムンドの予想としての記事であり、LFP(リーガ協会)にもCANAL+のサイトにも正式発表として掲載されなかった。それだけを唯一の頼みとして僕は最終発表を待ち続け、その数日後に上記決定が為されたのだった。CANAL+がアトレティコ戦を選んでくれたことに対し、メガトン級の投げキッスを送りたい気分だったのは言うまでもない。 |