アニキ語る。
マンチェスターとバルサは互角だとみる、ルイス・エンリケ。
日本で一般的に「アニキ」といえば、阪神タイガースのあの鉄人を連想する人が多いでしょうが、バルセロニスタであるならば、もうひとりの偉大なる鉄人、ルイス・エンリケを思い浮かべるかもしれません。バルサの炎のカピタンとして、ピッチ上でファイト溢れるプレーと熱いハートによってチームをぐいぐい引っ張った、まさに生まれついてのリーダー。現在は鉄人マラソンレースに参加するなど、フットボル以外の場面で活躍中の彼ですが、もちろん愛するバルサのことは忘れてはいません。マンチェスターとの2試合、下馬評では負けているバルサにだって勝ち抜ける可能性は十分にある!エンリケ兄貴はそう、断言しています。
◇唯一無二の、闘魂キャラクター
今のチームライカーには優秀な選手が揃ってはいるけれども、残念ながら状況が苦しい場面で仲間たちを鼓舞し、ハートで引っ張っていく選手がいない。これがこのところのふがいなく、覇気もイマイチ感じられないバルサの抱える、非常に重要な問題です。いわゆるキャプテンシーなるものをもった選手の不在。現チームにはプジョルなる素晴らしいカピタンがいますが、彼はピッチで全面に闘志をむき出しにするタイプではなく、しかも最近はチームメイトたちと一緒に萎んでしまうような様子で、“リーダー”とはなれていないのが実情です。デコが本調子であるならば、その役割はきっちり果たしてくれるのですが、彼は悲しいことに長期間の怪我にて離脱中。よってバルサ号は船長がおらず、嵐の中を航海しているようなものといえましょう。
こんな時、チームにルイス・エンリケがいてくれたら。いかなる場面でも戦うことを忘れず、不屈の闘志を持ったキャラクター。そんなカピタンがチームを引っ張ってくれていたなら、あるいはこんな悲惨なシーズンとなっていなかったかもしれませんし、マンチェスターとの一大決戦においても、非常に強力な支柱となってくれるでしょう。そういえばバンガール監督時代(98/99)、あのマンチェスターとの歴史的名勝負(3-3)当時、彼はチームの中心のひとりでした(カンプノウ戦には不出場)。そんなエンリケ兄貴のインタビューがスポルト紙に掲載されていますので、軽く紹介いたします。
◇両チームが本命
まずバルサとマンチェスターとの戦力比較ですが、エンリケは実力的に両者は拮抗している、と語ります。「俺はイーブンやと思うね。計算上ではマンチェスターがあらゆる点において好条件にあるけどね。彼らはプレミアリーグの首位チームやし、チャンピオンズでも抜群の安定感で勝ち進んできている。この大会で11連勝しているってのが彼らの状態、今の彼らのプレーレベルをよく表してるよね。でも俺はバルサにだって、勝ちぬけの可能性はけっこうあると信じてるよ。」ふむー、なんとも信じてもらえるのは嬉しいのですが、どうしても不安が先行するのが現実です。ただ、その分世間の目は“最強”ユナイテッドへと注がれており、大本命のシールは赤い悪魔にぺったんこと貼られています。これはバルサにとって、挑戦者の気持ちで気楽に戦えることでもあります。兄貴は言います。
「俺はそうやなくて、両チームは互角やと思ってるよ。そう信じてるし、そうあってほしいと思ってる。バルサはたいていのゲームにおいて、いつも本命なんや。正確に言えば、バルサはたしかに今ちょっと弱ってしまってるけど、それでも俺はマンチェスターが選手の面でもテクニコの面でも、ファンの面でも、明らかな本命やとは思えへんのや。でもこの曖昧さが、チームライカーにとってはええように作用するかもしれへんね。これが決勝への最終ステップやし、最後に笑うためにはこの苦難も価値があるよ。」
それになんといっても、バルサやマンチェスターといったグランデと呼ばれるクラブにとっても、チャンピオンズのセミファイナルという舞台には簡単に立てるものではありません。そこにいるだけで、名誉。そんなステージで最高の相手と戦えるわけですから、楽しまない手はないです。エンリケ兄貴もこういいます。「“魅力的”の言葉では収まらへんよね。カンプノウでの第1戦は、ファンの助けがあればマヂですごいゲームになるよ。これは間違いなく今のヨーロッパで見れる最高のカードやし、第2戦を自信をもって戦えるよう、ええ結果を掴めるとええよね。」
先日のシャルケ戦、バルサは非常にお粗末なプレーをしてしまったわけですが、ユナイテッド相手にあれをやれば、即ボコられて終わりになってしまいます。しかしエンリケは「前半のシャルケみたいにこられたら、どんなチームでも難しいし、第1戦の結果でほぼ勝ちぬけが決まっていたから、ちょっと気が緩んだんやろう」という見解を示しています。そしてマンチェスターとの決戦では、そのようなリラックスは起こることもないと断言する元カピタン。そうあることを願います。
◇9年前の、激闘の記憶
そして話は9年前の、グループリーグでのユナイテッドとの激戦へと移っています。まずは“夢の劇場”とまでいわれるオールド・トラッフォードの感想についてです。「雰囲気はとにかくスペクタクルやったよ。彼らには世界のファンが羨む“You'll never walk alone”はないけれども、スタジアムにはびっくりするし、歓声は耳が聞こえへんくらい。フットボル選手が憧れるすべてが、あそこにはあるよ。」大絶賛ですね。たしかにあのスタジアムは強烈です。しかし声援の大きさでは敵わないとしても、カンプノウ要塞だってなかなかのものです。兄貴も「負けてない」と評価するカンプノウ、サン・ジョルディの日に幸運にも生観戦できるクレ諸氏は、最高の応援でチームをサポートしましょう。
98/99シーズンの対戦は、オールド・トラッフォードの試合もカンプノウも、共に打ち合いの3-3なる結果となりました。この時は同グループにバイエルンまでいたので、バルサは悲しいかなここで敗退。後にバルサを押しのけた2チームが決勝まで生き残り、伝説のカンプノウ決勝を戦っているわけです。この2試合について、エンリケはこのように邂逅しています。「オールド・トラッフォードでの第1戦はスペクタクルな3-3やったね。前半に僕らはかなりやられて、ベッカムが強烈なフリーキックを突き刺したと思う。後半は俺たちがハートで巻き返し、71分の俺のペナルティで3-3に追いついたんや。あれが俺にとって、生涯唯一のペナルティでのゴール。カンプノウのエルクレス戦でも蹴ったことはあるけど、失敗してるからね・・・。あそこのファンは、ずっと歌い続けてチームを励ましていたね。第2戦は(怪我で)プレーできへんかったけど、ハイレベルな6ゴールをよく覚えてる。」
◇いつかはバルサに戻りたい
リーガでのあまりにも情けないプレーと結果により、現在のバルセロニスモは、チャンピオンズのセミファイナルに進出したクラブとは思えないくらいに暗い話題と悲観論に溢れています。このおんぼろバルサがマンチェスターと試合をやるなんて、恥ずかしい結果になるに違いない・・・といった具合に。これに対し、鉄人エンリケは次のような意見を述べています。「俺たちは今、世界最高のチームのひとつについて話をしてるわけやし、バルサは常勝が義務付けられたチームなんや。常勝はバルサにとってのテーマであり、すべての選手たちが知るところの目標でもある。でもそれはバイエルンやミラン、レアル・マドリにしたって同じことや。勝ちを求められるチームが期待された結果を出せへん時、チームは苦しみ始め、やがて恐怖が訪れる。」
そして最後に、来季はペップと共にカンプノウに戻ってくるのではないかと噂される、エンリケ自身の将来についての話題です。いつかバルサに帰ってきますか、との問いに、兄貴は次のように答えました。「フットボルは俺が一番好きなスポーツやしね。俺は幸運なことにプロ選手になれたし、今はちょっと距離をとってるわけやけれども、いつかはバルサに戻ってみたいなとは思ってるよ。でもそのためには、機会を待たなあかんのや。急ぐ必要は、全然ない。」
そうたしかに急ぐ必要はまったくないですし、ましてやラポルタ役員会の人気とり人事の駒となる必要もありません。ペップと同様にテクニコとしての経験をつみ、闘魂注入コーチとしていつか、カンプノウへ戻ってきて欲しいと思います。「自然な形での復帰にしたいというのは、譲れへんところやね。強引な形っていうのは、イヤなんや。その時が訪れ、俺の出番となったのなら、運命がそうしろって決めてくれるよ。もしそうでないなら、他にも楽しめることはいっぱいあるしね。」ですね。ではまたそう遠くない将来、兄貴の姿をカンプノウで見れることをのんびりと待っておりますよ。それまでは鉄人マラソンの話題ででも、クレを楽しませてくださいませ。
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