ムード一変。
先週とは180度異なり、俄然勢いの出てきたバルサ周辺。
「一日あれば、フットボルでは何が起きるか分からない」とはよく言われる言葉ですが、それがまさに現実になった感じです。ビルバオに引き分けた先週、カンプノウ周辺に漂うのは絶望感でした。9ポイント差など、“あの”マドリーから取り戻せるはずがない。リーガはほぼ終了した。逆転優勝を願ってはいても、それは限りなく無理がある願いだとクレは考えていました。しかし一週間後の今、バルサを包む空気はガラリと違っています。6ポイント差なら、十分に逆転可能。リーガはまだ残っている!たしかにそのとおり。そしてバルサの希望は、これから続くフエラ2連戦に懸かっているのです。
◇ひとつの勝利が、バルセロナの空気を換えた
“Hay Liga”。これがここ数日のバルサメディアに頻出する単語です。直訳すると、“リーガはある”。バルサにはまだまだ逆転優勝の可能性は残されており、残り16試合で6ポイントをひっくり返すことは十分にありえる話だ、と盛り上げるスローガンのようなものです。ほんの一週間前は、「リーガはもうダメだ。。。」と失意の底に沈んでいた(自分を含めての)バルセロニスタはしかし、 マドリの思いもよらない黒星によって息を吹き返し、さらにオサスナ戦の勝ち方が昨年の白組を彷彿とさせるものだったこともあり、イケイケムード。この変貌ぶりはさすがといったところですが、それだけ灰色の空気感の中でクレがうっ憤を溜めていたということでしょう。弾けたいんです。
バルセロニスタはこう考えています。実際に行われているプレーの質からして、リーガ前半戦の白組の成績はあまりにも出来すぎていた。同じ成績を後半戦も繰り返せるはずがなく、アルメリアにてボロが出た以上、これからもポイントは落としていくだろう。さらにシュスターのチームは伝統的に後半戦にペースを落とす傾向があるそうです。前半でポイントを稼ぎ、後半はその貯金でどうにかやりくりする。そういえばヘタフェでもそんな感じでした。逆にバルサは後半戦に巻き返す“伝統”があるので、これらを組み合わせれば、自ずとバルサはマドリとの差を詰めることになるわけです。なんだか、イケそうな気がしてきます。
◇次のセビージャ戦が、正念場
バルサの現時点での問題点は、ゴール前での決定力が恐ろしく低いことにあります。エトーがコパ・アフリカへ旅立って以来、2点以上取れたゲームがないという寂しさ。ということは、エトーが帰ってくれば幾分かは得点力は改善されるわけで、トゥレの帰還によって守備力がさらに安定することと加えれば、勝てる確率は上昇することも期待できます。そして昨年から苦渋をなめさせられてきた敵地での重要な決戦で、確実に勝利をモノにする勝負強さを手に入れること。カンプノウでは合格点の成績を残しているバルサの課題はフエラでの勝利であり、これからのセビージャ、サラゴサとの連戦がチームの命運を握っているといって過言ではないでしょう。
一週間でムードを一変させたバルセロニスタが、再び失意の底に沈まないためには、次の試合にきっちり勝たなければなりません。上昇ムード漂うバルサですが、2月のカレンダーは正直きつい。今後2週間はサンチェス・ピスファン、ラ・ロマレダでのゲームが続き、地元でのレバンテ戦でひと呼吸おいた後、ビセンテ・カルデロンのアトレチコ戦が待ち受けているのです。まさにチームの底力、精神力が試される1ヶ月。この強烈な3試合でもミスは出来ないとのプレッシャーがバルサには圧し掛かっており、下手をすれば本当にここで折れてしまう危険性だってありそうです。
しかし前向きに考えれば、そこまで追い詰められることで、バルサは覚悟を決めて全力を出しつくせるはず。マドリはこの3試合でこちらがポイントを落とす可能性が高いと踏んでいるでしょうから、そこを良い成績で突破することによって、精神的ダメージを与えることになるでしょう。オサスナ戦で執念の勝利を手にしたことにより、バルサ選手たちの内的レベルはひとつ上に上がっています(そう信じたい)。まずはサンチェス・ピスファンを攻略することになれば、その後は勢いでガンガンいけちゃうかもしれない。オサスナ戦に続き、週末のセビージャ戦はリーガを左右する大一番です。
◇運命を変えるゴールを決める男、チャビ
そしてこの“逆襲ムード”の最大の立役者の一人が、誰もが希望を失いかけていた88分、水たまりと化したピッチで正確極まりないハーフボレーによる決勝弾を叩き込んだ、チャビ・エルナンデスです。中盤でゲームのリズムを作るのが任務の彼は、決してゴール数の多いセントロカンピスタではありません。しかし彼がネットを揺らすことによって、そこからチームの逆襲が始まる印象が強い選手。デビューシーズンである98/99には、かの有名なバジャドリ戦でのヘッドを決めていますし、このゴールによってバンガールは更迭を免れただけではなく、奇跡とも思えた逆転優勝のきっかけもとなりました。記憶に新しいところでは、03/04シーズン、マドリの希望を消しバルサを2位に導いたベルナベウでのゴラッソなんてのもありました。
オサスナ戦のゴラッソを決めたチャビの表情は、非常に印象的でした。彼の顔に浮かんでいたのは笑顔というよりは、なにかに憮然としているかのような表情。英雄となりながらも、2試合続けてベンチスタートに甘んじていたことが、笑顔全開とはいかせなかったのでしょうか。チャビのプレーが輝くためには、サイドを広く利用するエストレーモや、パスコース用にスペースを開けてくれるデランテロが欠かせません。あとはもちろん、パスを散らすための周囲の動きも。チャビは自分だけで輝く選手ではなく、周りが活発であってこそより輝きを放つ選手ですから。
チームとしてのパススピードが遅く、かつてほど攻撃的でなく、パスコースもない。チャビは変わらずボールを失いませんが、中盤を省略し、ヘディングやフィジカルの当たりで勝負するフットボルでは彼は役立ちません。しかし後で紹介するチャビ自身のコメントのように、今のスタイルがずっと続くわけでもない。オサスナ戦のように彼が必要となる局面は必ず訪れますし、むしろその重要度は増しているといってもいいかもしれません。ここまで出ずっぱりのチャビでしたから、今はちょっと充電のチャンスだと思うくらいでちょうどいいでしょう。
◇「スタイルが変化したとは思ってない」
代表戦のため、マドリーに着いたチャビを待っていたのは、いつもなら有り得ない数の報道陣のマイクでした。リーガ第22節の、ひょっとすると07/08シーズン最高となるかもしれないゴールを決めた英雄ですので、さすがにこれを拒否することも出来ず。いつものように控えめながら、彼は次のようなコメントを残しています。まずはここ2試合連続してベンチスタートとなった件に関してです「それは監督の決断やからね。僕は毎練習でベストを尽くしてるし、重要なのはチームやから、この状況に不満を言うつもりもないよ。どうするべきかは、監督がよく知っている。」
そして彼は“横パスしか出さず、ゴールに向かわない選手”との批判に対し「あのゴールは僕に勇気を与えてくれるよ」と語ります。ただし、「満足はしてるけどそれは個人的なものより、チームの勝利に役立ったから」と優等生コメント。現実的なプレーが多くなったと言われるチームスタイルについては、次のような見解を述べています。「僕は言われているようなスタイルの変更があったとは思ってないよ。そうやなくて、選手がまず結果を考えるようになったんやろうね。僕はええプレーなしに勝つのは難しいと思ってる。1、2試合は出来たとしても、シーズンを通せば無理やろう。そやから僕は、僕らがスタイルを変えるとは思ってない。そうなれば、きっととてつもないエラーになるんやないかな。」なるほど、興味深い言葉です。
最後に、難しいフエラでの試合が続く前に、マドリとの差を6ポイントに縮められた件に関して。しんどい任務を前にして、これはチームにとって精神的に大きな助けになるとチャビは述べています。「わずか1節のうちに3ポイントを縮められたのは、希望が持てるよね。僕らはまだ差は大きいことを分かっているけど、たった1節で物事がガラッと変わることもあるんやからね。3ポイント制のリーガでは、誰も安穏とはしてられへんよ。2試合で6ポイントがひっくり返るわけやから。僕らは信念を失ってはないし、リーガはまだオープンな状態であり、6ポイントが決定的やないってのは間違いないよ。」
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