アンリフィーバー。
カンプノウに集いしファン、3万人強。
ティエリー・アンリが昨日、メディカルチェックと契約書へのサインを済ませ、正式にFCバルセロナの選手となることが決定しました。恒例のカンプノウでのプレゼンテーションに訪れたファンの数、なんとオーバー30,000!!あの熱狂を呼んだロナウジーニョのプレゼンでさえ25,000人だったわけですから、いかにアンリに対してバルセロニスタが期待を寄せているかが分かります。今後、これを超える選手が出てくるかどうか、というくらいの歴史的な数字。これにはアンリ自身も驚き、感動したことでしょう。暗黒期からの脱出のシンボルがロニーならば、アンリは逆襲プロジェクトの象徴です。クレは彼ら両クラックに希望の光を見出し、信じるがゆえに大挙して新たなるアイドルへ挨拶をしに駆けつけた。時代をも動かす、そんな雰囲気をもったメガクラックに乾杯!
◇メディカルチェック、問題なし
まずは順を追って、昨日のティエリー・アンリの行動を見てみましょう。フランス人クラックがメディカルチェックのため、バルセロナ市内の病院に姿を現したのは午前9時すぎのことでした。ここに訪れた目的は、血液や尿の検査を行い、MRIなどの精密検査を受けるため。アンリはバルサ医療部ドクターらの管理の下でこれらの検査を行い、終了後の12時、今度はカンプノウ内のメディカルセンターへと場所を移しました。ここで行われたのは、たまにテレビなどでも見かける、身体に計測用の端子をつけ、運動時の心拍数や血圧などを計るという検査です。テストの最中、ドクターたちと気さくに話し合っていたというアンリ。検査結果はすべて良好で、満足のいくものだったようです。一部で不安視されていた、故障などは見つかりませんでした。
「アンリはすべての検査を、申し分なくクリアしました。問題は一切検知されず、すべてが順調です。チームへの加入の妨げとなるような怪我、あるいは後遺症もまったくありませんでした。選手からも以前に違和感があったと報告を受け、心配とされた恥骨周辺は特に注意をして検査を行いました。これはその部位周辺の筋肉の不均衡によるものであり、私たちは彼がトップチームに合流するまでに、徹底的にここを鍛えておくことで合意しています」。これがメディカルチェック終了後の、バルサ医療部トップチーム責任者リカルド・プルーナ医師の発表です。1ヵ月後のプレシーズンスタートに向け、宿題を出されたアンリ。アニモ!
◇「バルサの成功が、僕の成功となる」
すべての検査を終え、およそ午後2時前、アンリはクラブの車にて一度カンプノウを後にしています。昼ご飯ですね。ちなみに昨日もアンリは黒のサマーセーターを身に着けていて、“32度を超えるバルセロナで、2日続けて長袖を着るとは”とカタランメディアもビックリ。「さすがにエレガントでオシャレ」だと報じています。そして午後5時頃にカンプノウ内にあるラポルタのオフィスにて正式な調印を済ませた後は、いよいよメディアとファン向けのプレゼンテーションです。まずは午後6時、メディア向けに、ラポルタやチキらを伴って“新しい14 HENRY”のネーム&ナンバー入りシャツを持っての記者会見。その部屋の名前が、2度目のチャンピオンズ制覇を記念して名づけられた“パリの間”というのは、なにやら因縁を感じさせてくれます。
この45分にわたった記者会見の中で、アンリは3つの言語(英語、フランス語、そしてちょっとしたカタラン語)を用いてバルサ選手としての意気込みや感想を述べています。曰く、「クラブのために100%を捧げるし、ファンにはいいフットボルとタイトルで楽しんでほしいね。バルサの成功が、僕の成功となるやろう。以前からバルサのやってるフットボルが好きやったんやけど、今は素晴らしいスタジアムや街を目にして興奮してる。それに情熱をもってここの人たちは働いてるし、そのクラブへの愛情とエネルギーによって、バルサはこんなに偉大なクラブになってるんやね」。“パリの間”に詰め掛けたマスコミは、各国から200人以上。文字通り、アンリも記者たちも熱さを感じたことでしょう。
そして気になる他のクラックたちとの共存については、重要なのは個人の利益よりもチームとしての利益だという見解を示したアンリ。仮にライカーがローテーションを命じたとしても、彼はそれを受け入れる準備が出来ていると語っています。「僕は自分が、才能ある選手が数多く在籍している偉大なクラブにいるってことを分かってるよ。もしミスターがローテーションの必要があると考えるなら、僕らはそれを尊重せなあかん。タイトルを勝ち取るという目標を達成するため、僕らは全員が同じ方向を向いてないとあかんからね」。あくまでも“僕ら”というところがミソですね。
さらにバルサでは特別な意味を持つ“14番”を選択したことについては、「会長からはこの番号がなにを意味するかを教えてもらったけど、空いてたから選んだよ。アーセナルに入団したとき、僕は代表で12番をつけていたんや。それでチームメイトがその番号を譲ろうかって言ってくれたんやけど、僕はそのとき唯一フリーやった14番を選んだ」と、この数字にまつわるエピソードを紹介しています。ラポルタが「バルサでは14番は成功しないジンクスがあってね・・・」と言ったかどうかは分かりませんが、きっとそんなジンクスも来年には迷信に変わっていることでしょう。
そして気になるエトーとの仲については、「僕とエトーの関係は、ずっと前からなんや。彼がまだマジョルカにいる頃やね。彼は僕が怪我をしているときに見舞いに来てくれたし、彼が怪我をしたときは僕も同じように彼を見舞った。マスコミの中には僕らを対立させたい人もいるようやけど、僕らはアミーゴなんや」と関係の良さをアンリは強調しました。ちなみに彼は会見の最後に「バルサでプレーできてすごく嬉しいです」という意味のカタラン語を話したのですが、その“師匠”は元チームメイトのセスク・ファブレガスだそうです。
◇プレゼン、熱狂の10分間
アンリの生涯忘れ得ない一日の最後のステージとなったのは、憧れだったカンプノウのピッチです。記者会見を終え、新しいバルサのユニフォームを身にまとって彼がロッカーからのトンネルを抜けグラウンドに登場したとき、実に30,000人を超えるクレが彼を出迎えました。旧ハイバリー・スタジアムならそろそろ満員という人数が、ただのプレゼンテーションに訪れたこと、そのすべてが彼の名前を叫び、歓迎の意を表していることに、クラックのハートはビンビンに震えたはず。国王杯の、しょっぱい試合よりもたくさんの観客が集まったわけですから。これまでの個人プレゼンでの最大観客動員数は、ロナウジーニョの約25,000人。アンリはその数字を、あっさりと更新してしまいました。アンリ伝説の、第一章です。
観客たちは、プレゼン開始予定時刻のかなり前からカンプノウへと集まりだしています。これにまずはビックリ。スタジアムが開門されたのは、アンリが登場するおよそ3時間前の午後4時です。ファンは正面スタンドに集められ、3階席まで通路を埋め尽くすほどの超満員。彼らはお目当てのアイドルが登場するまでの間、スクリーンに映される“パリの間”での記者会見の模様や、アンリの過去のゴールシーン映像などを“辛抱強く”楽しんでいます。そして待ちに待った午後7時、大音響のイムノと共にアンリ登場!スタジアムを熱狂のアンリコールが包み込みます。
グラウンドへと出たアンリはまず、スタンドのファンに向かって手を振って応えます。そして恒例のリフティングを行い(ロナウジーニョ流ボールキスも披露)、スタンドに2つのボールを蹴りこんでいます。その後フランス人クラックは会見場でも口にしたカタラン語でファンに挨拶。さらに両コーナー付近にいるファンのために走って手を振り、幾人かの“幸運”な乱入者と抱擁もしています。そして最後にもう一度、ファンに礼をしてロッカーへと引き上げていったアンリ。この間わずかに10分ほどだったわけですが、ファンたちはクラックとの最初の出会いに満足し、幸せな表情で家路へと着いたそうです。ようこそアンリ、これからよろしく!!
◇新たなるサイクルの象徴としてのメガクラック
およそ4年前となる2003年7月21日、25,000人のバルセロニスタは新たなる時代の到来を予感し、カンプノウへと押し寄せました。お目当ては、ウワサのブラジル人ロナウジーニョ・ガウチョ。バルサ復活の象徴としてパリからやってきた彼はそのプレゼンテーションにて数々の魔法をみせ、ファンに夢と希望を与えたのです。その後のロニーの活躍は知ってのとおり。一年目にチームをチャンピオンズへと復活させる原動力となり、二年目にリーガ制覇。三年目となる昨シーズンは、チャンピオンズとのドブレッテの立役者となりました。大きな期待を寄せられ、それに応えるというのは簡単なことではありません。しかしロナウジーニョは自らに与えられた任務を忠実に遂行し、まさに“顔”としてクラブとファンに大きな喜びをもたらしてくれました。
しかし、四年目の今季はコンディション調整に苦しみ、練習サボりと厳しい批判にもさらされました。挙句の果てには、彼だけのせいではないとはいえ、メレンゲに逆転優勝をプレゼント。ファンは失意に沈みます。バルサには逆襲(リベンジ)の象徴となる新たなるクラックが必要とされていました。そこで“タイミングよく”到来したのが、ティエリー・アンリです。チームに新鮮な風を吹き込み、クレに希望を注入するための、メディア的にもスポーツ的にも本物のクラック。その第一の効果は、ここ数日のバルセロニスモの活況を見れば一目瞭然です。
バルセロニスタはポジティブに悪夢のシーズンを忘れ去り、来るべき未来に目を輝かせています。アンリの到来と共に、バルサの輝かしいサイクルの第二幕がスタートする。そう確信できるからこそ、3万人ものファンが平日の昼間に集まったのです。ようこそアンリ!これからよろしく!!愛するアーセナルに別れを告げたことも良かったと思える、そんな未来を一緒につくっていきましょう!
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