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2007年6月10日

2-2:悪い冗談。

 

天国から地獄への、後半89分。

リーガ最終節を、マドリーに対して3ポイントのリードをつけて迎えることが出来そうだ。このバルセロニスタの希望は、89分の“悲劇”にて一瞬で砕け散ることになりました。いま目の前で起こっていることが、全く信じられない。「何が起こるかは分からない」といわれるフットボルでも、かなりレアなストーリーが現実のものとなったのです。しかもそのシナリオで恩恵をこうむることになったのが、レアル・マドリーだから堪らない。バルサはまたも最後の最後でリーガを決めることになるであろう3ポイントを放棄し、またとないチャンスを自分たちの手で捨てたのです。サラゴサの頑張りを活かすことが出来なかっただけでなく、同じ過ちを繰り返したことが最高に痛い。バルセロニスタを大いなる失意が包み込んでいます。

 

◇残り1分での悲劇

目の前で起こった現実をにわかに信じることが出来ずに、“凍りつく”というのはこういうことを差します。ベティス戦にて痛恨のエンパテを演じて以来、レアル白組の背中を見せられることで苦しみ続けてきたバルセロニスタが、ついに「逆転だ!」という希望によって照らていたその矢先。2つのスタジアムで交錯する運命により、突如としてその光を閉ざされてしまったのですから、いきなり出現した暗闇に立ちすくんだとしてもなんら不思議ではありません。バルサが首位に立つためにはマドリーのつまずきが必要条件であり、シナリオはその通りに進んでいた。ディエゴ・ミリートの2ゴールによって、バルサは最終節を3ポイントのアドバンテージを持って迎えようとしていたのです。まさに、理想的な展開。逆転による3連覇は、ほぼ確実だと誰もが考えていました。あの89分に同時多発的に発生した、2つのゴールがあるまでは。

主審が試合終了を告げるホイッスルを高らかに鳴らすまで、ロスタイムを含めてもあと5分ほど。あとは集中を切らさず、1点を守りきればいい。それだけで、バルサは首位に返り咲いていました。なのに89分、悲劇は起こります。ラ・ロマレダでニステルローイが2-2とするゴールを決めたという知らせに、カンプノウが「チイッ!」と舌打ちしたその数秒後。なんと今度はタムードがズドンとシュートをバルサゴールに突き刺し、スコアを2-2としてしまったのです。先制点を許し、前半終了間際にメッシの“神の手”によって同点に追いつき、後半早々に逆転。その後ロマレダで白組がリードを許すというニュースもあり、シナリオとしてはまずまず。ドラマはそのままエンディングとなり、クレは最高にハッピーな週末を送るはずでした。しかし、「現実は小説より奇なり」です。

 

◇タイトルのチャンスを、再び自ら放棄

マドリーはおそらく、ラ・ロマレダでポイントを落とすだろう。負けるのは難しくとも、引き分けに終わる可能性は高い。サラゴサはきっと、バルセロニスタの期待に応えてくれるだろう。ディエゴ・ミリートらの頑張りによって、この“バルサ逆転優勝へのシナリオ第一弾”は見事に達成されました。ありがとう、サラゴサ。しかしもうひとつの果たすべき条件、“バルサがデルビーに勝利”を実現できねば全く意味はありません。あと数分を上手く消化することさえしていれば、リーガ3連覇は間違いなくバルサのものだったでしょう。最終節の相手は、最下位で同郷のナスティックなのですから。ロマレダでのニステルローイの同点弾は仕方ないにして、タムードに許した同点弾は最悪。そうなった時のため、3点目を決めておけなかったことも問題です。首位を譲ったベティス戦と同じく、勝てていた試合を自分たちで捨てたというのが、どうしようもありません。

“もっとも強くポイントを積み重ねたチーム”ではなく、“もっともエラーを少なくすることが出来たチーム”が優勝するという流れになっていた06/07シーズンのリーガ・エスパニョーラ。前半にエラーを繰り返したマドリーが、セビージャとバルサのエラーによって息を吹き返し、最後に執念でタイトルをかっさらっていく。まだバルサには最後の望みは残されてはいますが、どうやら可能性としてはそういうシナリオで幕を下ろすことになりそうです。バルセロニスタは逆転優勝のためには“奇跡”に頼るしかないと願い続け、実際にフットボルの神様はそのお膳立てをしてくれていました。なのに、勝利を自力で決めきることが出来ない弱さ。バルサが3連覇を果たすには今一度の“奇跡”が起こるしかないですが、今回よりも要求レベルの高い奇跡が起きるなどということは、期待できないし、すべきでもないのかもしれません。このようにして、タイトルとは失われていくものです。

 

◇この一年を象徴するようなゲーム

今季バルサはかろうじて優勝トロフィーを2つ獲得してはいますが、それを堂々と2冠だ!と叫ぶほどの勇気はとてもありません。この手のタイトルはメジャーなものを獲得してこそ、○冠としてカウントすることを許されるのですから。よってサン・ドニで栄華を極めたそのチームがわずか1年にして、“無冠”でシーズンを終えようなどとは、どのバルセロニスタが想像をしえたでしょう。あと一週間がバルサには残されているとはいえ、失意のシーズンとなる可能性は非常に大というこの状況。結局のところ、横浜にて狂った歯車は、最後まで修正されることはなかったわけです。数々の失望をかろうじて埋め合わせることが出来た最後の希望も、もはや風前の灯。しかも“最後の最後でまたしても・・・”という悪夢が、現実をよりハードなものとしています。それに来週にマドリーが大失態を演じたとしても、この1年でバルサが失った信頼を回復するわけでもありません。死に掛けていたメレンゲを甦らせたのはバルサであり、最後にタイトルをプレゼントするのもバルサです。

とにかく悔やんだり愚痴ったりするしかないというこの状況が、悔しくてたまらない。試合終了1分前まで、タイトルをこの手の中に掴んでいただけに尚更です。サラゴサの援護射撃も、それまでの89分の頑張りも、すべてを無駄にする最後の失点。チャンピオンズや国王杯で散ったときも大いに落胆しましたが、これほどに精神的ダメージを受けた記憶は、ちょっとやそっとでは見つからない。数え切れないほどのエラーを犯してきたシーズンの締めくくりが、自らのエラーによっての事実上の終戦宣言とは。これがカンペオンだったチームの1年後の成れの果てなのですから、悪い冗談と思うしかありません。認めたくはないものの、このままシーズンが“大失敗”として終了する可能性はきわめて高く、クラブを挙げての徹底した自己批判が求められます。もはや“改革”すら、否定できるものではありません。

 

「この結果は、僕らのこの一年を集約しているね。僕らが今季リーガを獲れんかったとしたら、それはマドリーが勝ったからやなく、僕らが自分に負けたからに他ならへんよ。僕らが彼らにチャンスを提供し、今度もリーガの半分をプレゼントした。それが悲劇やね」。これが試合終了後のチャビ・エルナンデスの言葉です。こんなことになるのなら、チャンピオンズの予選から参加する3位になってもセビージャにタイトルを獲られたほうがマシだったかもしれませんが、それはもう後の祭り。あとはもう、来週日曜にマドリーがバルサへのプレゼント返しをしてくれることを淡く期待するだけです。フットボルでは、何が起こるか分からないのですから。最後に、闘将プジョルからファンにあてたメッセージを紹介しておきます。「最後まで戦い、もうタイトルを失ったなんて考えないようにしよう。最後まで希望は捨てたらあかんよ」。

 

 

 

 

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