5-2:スーペル・メッシ!
マラドーナの伝説ゴールが、カンプノウに甦る。
堅実な守備組織を誇り、知将ベルント・シュスターによって率いられた“曲者チーム”、ヘタフェ。彼らとの国王杯1/2ファイナルは、「カンプノウでのゲームといえども楽ではないだろう」、「勝つのは当然の義務としても、チームの現状を考慮すると、きっと多くは望めない」というのが、試合前に漂っていた率直な印象でした。しかしそんな空気を、劇的に吹き飛ばしたのがリオネル・メッシの超絶ゴール。母国の大先輩マラドーナの“伝説の5人抜き”の再現のようなスーパープレーで、カンプノウをフィエスタへと導いてくれました。そして世界は、若きクラックのゴラッソに騒然。バルサの歴史にまたひとつ、新たな伝説が書き加えられました。
◇衝撃、12秒の魔法
「まるで86年W杯メキシコ大会での、マラドーナのゴールのようだ!」。スペイン、アルゼンチン、そしてその他世界中の国の新聞で、このような見出しが踊っています。あのイングランド戦でディエゴが見せた“伝説の5人抜き”。フットボルの歴史にさん然と刻まれたあのゴール、フットボルファンなら誰もが知っているあのゴール、それを“マラドーナの後継者”といわれるリオネル・メッシがやってのけた。ともにセンターライン付近でボールを受けると、するりするりと相手デフェンサを抜き去り、最後はポルテーロまで処理して無人のネットへ・・・。ボールタッチ数も同じ13回。違いはメッシが12秒を要したところを、マラドーナは10秒でやってのけたことくらいでしょうか。そんな細かいことはどうでもよく、とにかく衝撃的なゴラッソだった。それで十分です。
たしかにゴールの“価値”という点では、さすがにマラドーナのそれには及びません。片やムンディアルの1/4ファイナルという大舞台、片やコパの1/2ファイナル。それでもバルセロニスタにとっては、愛するレオが大巨人マラドーナのそれに匹敵するゴールを決めてくれたことが、なによりも誇らしいです。このゴールが決まった瞬間、スタンドは「どえらいものを見た!」という興奮で大爆発。メッシ自身も恍惚の表情を浮かべ、チームメイトもベンチも、大祝福大会のスタートです。観客席には、なぜそんなものをしっかり用意している?というような白いハンカチが乱舞し、試合はある意味、この時点で終わっていました。バルサが勝つのはもう“分かっていること”ですし、残り時間はただ、スーパープレーの余韻を楽しむためだけにあったからです。
◇メッシ、かく語りき
「重要なのは、いつもどおりのメンタリティを持って仕事をやれたことやね。もちろん、あのゴールには満足してるよ。それと勝てたことにもね。僕らは勝利を目指していたから、それが一番大事なことなんや」。これが試合終了直後、バルサTVのインタビューに対してのレオ・メッシのまず最初のコメントでした。あくまでも、謙虚。家族の育て方が素晴らしかったのでしょう。そしてインタビュアーは、語り継がれるであろうゴールを彼がどのようにして決めたのか、尋ねます。若きクラックの説明は、次のようなものでした。
「目の前にスペースが見えたんや。かなり大きなスペースやったし、それで僕はいつものように、前に進んでやろうとドリブルを始めたんや。最初の狙いは、ゴールエリアに迫っていくことやったね。それで僕は近くにサム(エトー)がいるのに気付いたんやけど、前には2人で立ってるデフェンサがいたから、自分で突破することにしたよ。パスも考えたけど、彼らを抜いてやろうって決めたんや」
スタンドが彼の名前を大合唱するのを聞き、メッシは心底バルセロニスタであることの喜びを感じたことでしょう。レオは昨シーズン、そして今季、続けざまに不幸な怪我に泣かされてきました。リハビリのことが脳裏をよぎったかどうかは分かりませんが、あの怪我がいっそう、このゴールを感慨深いものにしているのも間違いなさそうです。そして最後に、このゴールは誰に捧げますかという質問。レオは迷うことなく、こう答えています。「いま難しい状況にある、ディエゴ・アルマンド・マラドーナに」。しっかりしてるね、19歳!この先もレオとバルサに大いなる幸運が待ち受けていますように。
◇後半、一時ダメバルサ
というわけで、苦戦が予想されたヘタフェ戦は5-2でバルサの勝利。序盤はシュスターのバルサ対策“3ピボッテ作戦”に戸惑いもしたようですが、この日は大いにキレがあったチャビの先制点によってグイッと流れを引き寄せ、フィエスタに持ち込めたことには評価できます。メッシのゴラッソが凄すぎたことで目立っていませんが、チャビのゴールもなかなかに芸術的だった模様。気を良くしたチャビを中心にボールは気持ちよく回り始め、ヘタフェはなす術なく防戦一方になっていきました。そしてメッシの“魔法の12秒”を含む2ゴールによってほぼ試合を決定付け、お祭りムードで前半を終了。ここまでは、ほぼ完璧といっていいでしょう。しかし、その後がいけません。
今季のバルサは、前半に壮大なプレーをしたかと思えば、後半に別人に入れ替わってしまう傾向があります。昨日もまさにそんな様子で、3点のリードに気を許し、集中力を失って失点を繰り返すというカンペオンらしからぬ有様。60分前後に続けざまに2失点、気がつけば3-0が3-2へ。。。もしこのまま終わっていれば、敵地での第2戦はかなり際どいものとなっていたでしょう。同じメンタルを90分間キープできないこの問題、いまだに解決されていません。ただ、今回は選手たちが意地を見せ、すぐさまリアクションを示したことで傷口は広がりませんでした。終わってみれば、怒涛の5得点。ヘタフェでの第2戦は残っていますが、決勝進出の切符はほぼ手中に収めたと考えていいでしょう。もちろん、リラックスは厳禁ではありますが。なにはともあれ、勝ってよし。今日はスーペル・メッシ新伝説の余韻を満喫することにしましょうか。
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