1-2:ギャンブル成功。
まさかの3-4-3で、サラゴサの意表を突く。
フランク・ライカーというお人、慎重すぎるようでいて、意外と大胆なところもあります。勝つしかないラ・ロマレダでの決戦で、まさかのシステム変更をしてこようとは。しかもバルセロニスタには堪らないドリームチーム風3-4-3ですから、思い切ったことをやってくれます。それに動揺したのか、プレッシャーに潰されたのか、サラゴサはとにかくいつものサラゴサではなく、バルサはまんまと逃げ切り勝利に成功したのでした。この奇襲作戦が常に上手くいくとは限りませんが、今回は大成功。アンフィールドでどういくにせよ、ベニテスを多少なりとも迷わせる効果はあるでしょう。そしてバルサ、ついにフエラ症候群を克服。勢いはぶっとくなりつつあります。
◇ライカーの勇敢な決断
サラゴサ戦を前にして発表されたスタメンリストに、誰もが驚かされました。デフェンサが3人で、セントロカンピスタが4人、そしてデランテロが3人。中盤にボールテクニックのある"チビッ子三銃士"を並べ、その前にダミーの"9番"を置くというそのシステムはまさに、90年代にヨハン・クライフが全世界に衝撃を起こしたドリームチームではありませんか。「どうせもう後がないし、派手に散ってやるかな」と思ったわけではなく、あくまでも綿密で緻密な計算に基づいた作戦だったのでしょうが、大胆なことをしたものです。しかし効果はてきめん。ライカーの「攻めろ!」というメッセージを受け取った選手たちは序盤から攻勢をかけ、45分でほぼ勝負をつけてしまったのですから。
実際の映像で確認できていないので、あまりなんとも言えないのですが、昨日のバルサは特に前半の動きが良かったそうです。中盤でのプレスが効果的に決まり、相手ゴール前ではチャンスを作り出す。昨シーズンのバルサにあって、今シーズンは姿を消していた中盤を制圧するプレーというものが、ライカーの勇敢な決断によってもたらされたのです。とにかく、少しでも早くゴールを決めたいというのが監督の狙いでした。しかも1点ではなく、相手の戦意を喪失させるだけのゴレアーダがいい。攻撃は最大の防御であり、ボールを支配している限りは相手にチャンスは与えないという"バルサ哲学"を久々に感じ、その一方で抑えるところは4バックに戻すことで耐え抜く。チームはまたひとつ、ステージをひとつ上がったような気がします。
◇わずか数日でも、パノラマは変わる
この勝利によってライカーの後光が輝きを増したのは間違いないところですが、チームが得たものもかなり大きいと思われます。まず、エトーを抜きでもフエラでの"決勝戦"に勝てたんだという自信。ホームでの勝利によって掴んだ流れをアウェーで負けて手放すという行為を繰り返していたバルサはついに、フエラでの大一番で勢いを増幅させることに成功しました。それによって甦る、「俺たちはバルサだ、カンペオンだ!」という誇りとアイデンティティ。燃え上がるアドレナリン。今はきっと、「頑張ればどんなチームにだって勝つことが出来る」という勝者のメンタリティを取り戻していることでしょう。セビージャは覚悟をしておいたほうがいいですし、リバポーは先週のチームは別人バルサだったと捉えておかねば、間違いなく痛い目に遭います。もっとも、こちらとしてはその方がいいのですが。
フットボルの世界は、わずか数日でパノラマが一変します。エトー復活によってもたらされた効果は、エトー抜きでも続きました。この調子で週末のサンチェス・ピスファンを攻略すれば、ボストンへ旅立った100億円ピッチャーの名言よろしく、自信は確信へステップアップ。そのままの勢いでアンフィールドまで陥落させることでしょう。きっとビールを飲みながら自分たちの勝利を疑っていないであろうリバポーファンたち、今バルセロナでは劇的な変化が起ころうとしていますよ。でも気づいてないんだろうなぁ。もっとも、こちらとしてはその方がいいのですが。
◇チビッ子たちが大活躍
175センチと、自分よりも2センチ背の高いイニエスタを"チビッ子"と呼んでしまうのは若干の抵抗もありますが(^^)、フィジカルで相手に勝とうという風潮の強い現代フットボルの中で、160〜170センチの選手をずらりと並べ、しかも相手を翻弄して買ってしまうというチームはきわめて異色の存在。それがバルサというチームなのです。昨日のサラゴサ戦では、そのチビッ子たちによって構成された中盤が特に効いていた模様で、前半はチャビ・デコ・イニエスタの3人のプレスとパスコントロールによって中央を完全に制圧。ゴールはいずれもが2列目の攻撃参加によるものですから、これからのゲームにとってもかなり明るい材料です。中盤でボールを奪ってからマルケスとワンツーを絡め、エリアまで持ち込んでネットを揺らしたチャビの先制点は、きっと語り草になるのでしょう。
そして前線のチビッ子、リオネル・メッシの働きもどうやら目覚しかったんだそうです。ゴールこそ決めてませんが、エトーなき攻撃陣の中心で存分に存在感を発揮。切れのあるときのメッシは、とにかく守る者にとっては苛立ちを募らせてくれる選手です。昨年のスタンフォード・ブリッジがそうだったように、昨日のサラゴサ守備陣も相当にレオには神経を逆撫でされています。その極みが66分のダレッサンドロ。頭突きマスターの某フランス人クラックほどではありませんが、カベソン(でか頭)はカベサッソ(ヘディング)にてピッチからサヨナラとなりました。メッシのフォームは今、ほぼ100%というところに到達しています。あとは上手くエトーと噛み合っていければ、アンフィールドの大型バスたちも1台や2台は赤い紙をもらえるかもしれませんね。
◇完全復活の日、近し
カンペオンの誇りを取り戻したバルサは、ハッキリいってそう簡単には止められるものではありません。ラ・ロマレダでの勝利はレッドブルのごとくバルサに翼を授け、セビージャを倒すことでジェットエンジンまで搭載されることになるでしょう。ピッチの黒豹エトーと、小悪魔メッシの復帰、それに伴うロニーの覚醒、さらには中盤の復活によって、バルサはヨーロッパを制した時の迫力を再び身にまとおうとしています。サラゴサ戦のビデオを見たベニテスは、「やばい」と思ったはず。カンプノウで惨めに散っていった、迷い犬バルサはもういません。そしてあの難しい状況から、チームをここまで持ってきてしまったライカーの力技。まだ少し、完全復活を声高に叫ぶにはタメライのあるこの管理人を壊れさせてくれるほどのインパクトを、これからの1週間には期待せずにはいられません。あと3つ勝ちを並べられれば、その時こそ完全復活です。
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